マーケティング戦略を考える上で重要な「STP分析」。競争の激しい市場で勝ち抜くためには、ターゲットの明確化と自社のポジショニングが欠かせません。本記事では、STP分析の基本から、実務で活用するためのステップまでを詳しく解説していきます。
STP分析とは何か
STP分析とは、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲットの選定)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップから成るマーケティングフレームワークです。これにより、自社の商品やサービスが誰に向けて、どのような価値を提供するのかを明確にすることができます。
Segmentation 市場を細分化する
市場全体をそのまま対象にしても、すべての人に同じアプローチをするのは非効率です。まずは市場を細分化し、特徴ごとにグループ分けを行います。
セグメンテーションの軸とは
市場を分類する際には、以下のような軸がよく使われます。
- 地理的変数(地域、都市、気候など)
- 人口動態(年齢、性別、家族構成、収入など)
- 心理的特性(ライフスタイル、価値観など)
- 行動特性(購買行動、利用頻度、ロイヤルティなど)
これらの軸を組み合わせることで、より精度の高い市場細分化が可能になります。
Targeting 優先すべきターゲットを選ぶ
市場を細分化したら、次はどのセグメントに注力するかを決定します。これがターゲティングの工程です。
ターゲット選定の評価基準
ターゲットを選ぶ際には、次の観点で評価しましょう。
- セグメントの規模と成長性
- セグメントの収益性
- 自社の資源との親和性
- 競合状況の有利不利
これらの情報を総合的に分析して、自社にとって最も効果的なターゲットを選定することが重要です。
Positioning ポジショニング戦略を立てる
ターゲットが決まったら、その層に対して自社の商品やサービスをどのように見せるかを設計します。これがポジショニングのステップです。
明確な差別化を打ち出す
ポジショニングでは、競合と比較して自社がどのような価値を提供できるのかを明確にする必要があります。差別化の切り口には、価格、品質、デザイン、サービス内容などがあります。
STP分析を実践するための5ステップ
ステップ1 自社商品と市場の現状を把握する
まずは自社のビジネス環境や商品・サービスの特性を整理しましょう。
事例:A社の高級チョコレートブランド
A社は、主にバレンタインシーズンに売上が集中する高級チョコレートを展開しています。季節需要の波が大きく、通常時の販売強化が課題です。
ステップ2 セグメンテーションで市場を分類する
市場を属性ごとに細分化し、特徴を把握します。
事例:セグメントの分類方法(A社の場合)
- 地理的要因:都市部 vs 地方
- 人口動態:20代〜30代の女性 vs 40代以上の男性
- 心理的特性:自分へのご褒美志向 vs ギフト志向
- 行動特性:オンライン購入派 vs 実店舗派
このように細分化することで、より適切なアプローチを検討できます。
ステップ3 各セグメントを評価しターゲットを選定する
細分化した市場の中から、自社にとって最も魅力的な層を選びます。
事例:A社が選定したターゲット層
A社は、「20代後半〜30代前半の都市部に住む自分へのご褒美を重視する女性」を主なターゲットに設定しました。この層は価格感度が低く、高品質な商品への関心が高いという特徴があります。
ステップ4 ポジショニング戦略を設計する
選んだターゲット層に「どんなブランド」として認識してもらうかを明確にします。
事例:A社のポジショニング戦略
競合他社のチョコレートが「手軽でポップ」なイメージを打ち出す中、A社は「大人の女性のための上質なひととき」を提供するブランドとして差別化を図りました。高級感のあるパッケージと、百貨店やセレクトショップでの限定販売がその施策の一部です。
ステップ5 マーケティング施策へ落とし込む
最後に、立案したSTP戦略を具体的なマーケティング施策に展開します。
事例:A社の施策実行例
- ブランドサイトにてストーリー性のあるコンテンツを配信
- インフルエンサーによる試食レビューをSNSで展開
- 定期購入やギフト包装サービスを導入し、日常需要を掘り起こす
これにより、オフシーズンの売上も向上し、年間を通じての安定した収益が実現されました。
STP分析がもたらすメリット
STP分析を行うことで、以下のような効果が得られます。
- 顧客ニーズの明確化
- 無駄のないマーケティング施策の立案
- ブランディングの一貫性強化
- 顧客満足度とLTV(ライフタイムバリュー)の向上
特に競争の激しい業界では、STP分析が企業成長の鍵を握ることも珍しくありません。
STP分析を成功させるための注意点
STP分析を効果的に行うには、以下のポイントにも注意しましょう。
- 顧客視点を常に持つ
- 定期的な見直しを行う
- データと直感のバランスを取る
分析は一度きりで終わるものではなく、環境変化や顧客の変化に合わせて柔軟に対応する姿勢が重要です。
まとめ
STP分析は、競争の激しい現代のビジネス環境において、自社のポジションを確立し、ターゲットに響く施策を打ち出すための必須フレームワークです。事例を交えた5ステップを参考に、ぜひ自社でも活用してみてください。
Last Updated on 2025年6月3日 by ひらや